出版社に長いこと勤めていたおかげで、たまに書籍がらみのご相談を受けることがあります。
先日、我々家族がお世話になっている小児科の先生から、病院に来るのを怖がるお子さんのためにと絵本を自費出版したけど、なかなか販売につながらないとの話を聞き、流通させるためのお手伝いをすることにしました。
伝手を頼っていくつかの卸業者に話を聞くことができ、同じ出版業界でも自分が関わってきた女性誌の世界とまったく違う世界で、とても面白い経験ができました。
たとえば、絵本の出版社は独自で販売会社を持っているところがあり、幼稚園や保育園を回って注文を取っている。園の先生との相性で売り上げが大きく違ってきて、A社の担当者と折り合いが良くないけれどA社の絵本が欲しい場合は、B社の担当者に頼んで、その担当者はA社から横流ししてもらって仕入れる、とか。
そんな話を聞いて思ったのは、出版不況と言われて久しいですが、エンドユーザーにつながる流通を押さえているところはやっぱり強いなということですね。通常の流れでは書籍や雑誌を作ったら取次(問屋)→書店に流すだけですが、それよりも作った商品を丁寧に紹介するチャネルがあるほうが買ってもらいやすいのは当たり前です。本屋さんの店頭で店員さんや出版社の人間が本についていちいち説明することはまずないですから。
もちろん人件費、アイテムの多さ、読者ターゲットの問題など障壁はたくさんありますが、少なくとも絵本の世界ではまだまだ成立しているモデルなんだなということがわかり、大変興味深かったです。