世田谷区手をつなぐ育成会の勉強会に参加して、国学院大学教授の佐藤彰一先生のお話を伺ってきました。先生は弁護士でもあり、権利擁護の世界ではたいへん著名な方です。私も先生の著作は何度も目にしています。
テーマは成年後見の動向と課題ということで、世界の成年後見はパラダイム転換の途上にあり、その中で日本の成年後見制度は制度疲労を起こしている。という内容です。
パラダイム変換とは具体的に何かというと、今まで考えられていた後見とは、本人に代わって何かをしてあげる。悪い言い方をすれば本人の権利を取り上げて後見人が物事を決める。本人=被後見人は判断能力がないのだから、それが本人のためになることである。という考え方でした。言うなれば代行決定ですね。
しかし、後見人がこれがいいと思っていても、実は本人はそれは不満で違うことをしたいと思っているかもしれません。アメリカで、ダウン症の女性の親が自らを後見人として申立をして、本人をグループホームに住まわせようとしたが、本人は自分には後見人はいらないと意思表示をして自分を雇っているリサイクルショップの経営者の家に住むと主張した裁判があり、判決では後見人はつけるがそれは経営者である、後見人は本人の意思決定を支援する、というものでした。本人の希望がほぼ叶えられたものでした。
ここでのポイントは、後見人は意思決定支援をする、ということです。これが今の世界の潮流で、代行決定からのパラダイム転換とはまさにこのことです。
そして、日本の成年後見制度は、相変わらず本人の権利を取り上げて後見人に委ねる代行決定です。残念ながらそこに本人の意思をどうくみ取って、それを実現するかという考え方はありません。その部分も、後見人それぞれに完全に任されています。
ここ最近、後見人の不祥事、つまり本人の財産を勝手に使い込む事件が後を絶たないことがあり、後見信託や後見監督人をつける事例が増えてきました。が、意思決定という観点からするとその解決策ではありませんね。
(この項続く)