成年後見の現状について②

この意思決定というテーマですが、世界の潮流とか日本の制度の問題点とかの大きな視点はとりあえず置いて、私自身の経験上、思うところを書かせていただきます。

現在区民後見人の立場で成年後見人を受任しています。高齢の方です。詳しいことはここでは書けませんが、本人のために何かを決めなくてはいけないとき、毎回自分が決めていいのか悩んでいます。

もちろん制度上は後見人が決めることになっているのはわかっていますが、本人はどう思っているのか、その意向をどうやって確かめればいいのか、あるいはそんなことは気にしなくてもいいのか…

そもそも私の場合、受任したのは昨年秋で、本人とは月1回程度しか会いませんので、今まで5、6回しかお目にかかってません。そんな自分がさまざまな場面で物事を決めてしまっていいのかというのは、たぶん今後も自分の中でしっくりこないまま、後見人を続けることになると思います。

さて、佐藤先生が講演の中でおっしゃっていたのは、後見を司法や福祉だけでなく、多様な専門職や地域とで関わりあって進めていくべきであるということ。後見活動だけに特化しない、権利擁護支援であるということです。後見人の立場からしても、これは非常にありがたいことです。すべてあなたにおまかせ、というと重い責任が課せられたように思ってしまい(実際そうです)、負担ばかりを感じてしまいます。

私の場合でも、本人をよりご存じなのは、今入っている介護施設の方、今まで携わってきたケアマネさんや行政の方、さらには住んでいた地域の方々です。誰か一人に任せるというのは、制度上は効率がいいでしょうが、本人の権利擁護、意思決定尊重という趣旨から見ると、方向性は合っていないのではと感じています。

高崎の福祉セミナーでも、罪を犯した知的障害者の社会復帰を支援するために、福祉や司法、行政、地域の方などさまざまな関係者と連携していく必要があるという話がありましたが、誰かを支えるためには一人の力では限界がある、多くの専門知識を集めていかなければいけないということを強く思いました。

佐藤先生もおっしゃっていましたが、このような問題を抱えている中で、成年後見制度についても今後変化していくだろうと思います。その動きを注視しながら、法制度の中で自分はどう考え何をすべきかを、決めていきたいと思います。もちろん、権利擁護の発送をいつも念頭に置きながら。